亀の住む家 飛び立つ羽虫

家の横に、亀たちが住む池がある。
それは時に懐かしい気分を思い出させてくれて嬉しいのだけど、管理人がずさんなせいか、夜中も浄水器(とは言わないかもしれないけれど、そういうもの)が稼働していてうるさかったりする。
そして、羽虫が異常に多いことに一番困っている。
彼らは網戸の隙間をいとも簡単に通りぬけ、僕の部屋に勝手におじゃましてくる。はっきりいって迷惑だ(正面玄関からチャイムを鳴らして入ってきてももちろん迷惑だ)。

僕は、決して暴力的な人間ではないと自負しているし、無駄な殺生もあまり好まない。蚊に関しては殺害センサーが反応してしまうけれど、羽虫くらいなら、殺意もわかない。
けれど、PCのスクリーンの前をうざうざとぶんぶんされてしまうと、少し暴力的な自分が顔を出す。
殺す素振りを見せようとして、手のひらを羽虫の体の上に被せるが、彼らはなぜだか逃げない。
彼らには恐怖というものはないのだろうか。
それとも、ドラゴンボールの描写にもあったように

「貴様、なぜ私の攻撃をかわさなかった!?」
   「フッ、お前の体から殺意が感じなかったからだ。」
「!?・・・(コイツ...出来る!!)」

みたいな現象が起こっているのだろうか。
そんなことが頭をよぎり、僕は一匹に本当の殺意を向けてみた。文字通り、本当に殺す決意をし、それを行動で示したということだ。

すると、羽虫は微動だにすることなく
「プチッ」と乾いた音を立てた。
僕は全然、悪気を感じなかった。気味悪さも(そのときは)感じなかった。
多分、日本で普通に育ってきた人はそういう風に感じるようにできているのだと思う。なんだか悲しいかもしれないけど。

けれど、羽虫はどうなんだ。
彼らにとって生きているってなんなんだ。
恐怖とはなんだ。
死とはなんだ。
自分の体の数百倍もの大きさの手のひらが、落ちてきても何も思わないのか。
もはや、死を受け入れたのか。死という概念を知らないのか。
僕にはよくわからない。

僕らは祈る時に手を合わせたりするけれども、生命を奪う時だって手のひらを合わせる。
その手を蚊はするするとかわす。ハエだってそうだ。小動物になると、もはや人が近づくだけで逃げ出す。
それが生命体に生まれつき備わっている能力だと僕は思っていた。だけど、どうして羽虫は逃げないんだろう。


僕が殺した命は、少なくとも僕が眠るまで頭の片隅から離れることはないんだろう。
僕が鳴らしたあの音を、僕は時々思い出すんだろう。
また、羽蟲が僕の右手のそばにやってきた。


PS.蚊とか、ハエみたいな、いわゆる僕達にとっての害虫達、彼らの頭がもっと良かったら、僕らとコミュニケーションをとりあって、竹島(または独島。はっきりいって僕にはどちらの呼び名でも構わない)とかの離島でお互い仲良く暮らしてもらえないかなと思う。

それが数十年後、生態的進化を遂げ、文明を持ち、害虫VS人間戦争が始まることになるとか、妄想してたけど、完璧にテラフォーマーズが漫画化してました。すみません。
あと、FLYという蚊の映画は僕の好きな映画の1つです。