百万円と苦虫女

日本の映画で「好きな映画は?」と聞かれると、まっさきにこの映画のことを思い出す。
特別にドラマチックなことなんて何もなくて、逆に日本映画特有の暗さがあるわけでもない。ほんと、普通の映画だと思う。人によっては退屈かもしれない。

だけど、僕はやっぱりこの映画が好きだ。
蒼井優が可愛いからだとか、やっぱり森山未來は俳優として他の俳優とは群を抜いているくらい凄いからとか、そんなんじゃなくて、僕はこの映画がただただ好きだ。

なんて言ったって、ラストが最高に素敵だ。
ハッピーエンドとは言えないけれど、暗いわけでもない。
けれど、彼女が最後に語る言葉に、とんでもなく締め付けられてしまう。

2時間ぽっちのフィルムの中での、事実ではない出来事なのに、僕の頭の中では今でもその言葉が離れない。
友人の家で、半年くらい前にたった一度きり見ただけなのに未だに離れない。

映画のラストを見ても、「甘酸っぱいな」と思って、それっきりで終わる人もいるかもしれない。

けれど、あの言葉には、彼女のその先が見えたりもする。
僕は、その先を無粋にも、あれやこれやと考えて、どれも続きにはふさわしくないなと思って考えるのをやめる。


映画や、小説なんて、僕らと違う世界の話なのに、読み終わってしまうと、そっちの世界について随分と考えさせられて、勝手に一週間くらいなんとも言えない淡い気分にさせられたりして困る。けれど、もう一生これは繰り返していくんだろなとか思ってる。

120分の使い方を誰かに教える機会があるときはいつも、この映画のことを頭に浮かべてしまいます。