眼鏡君のホームラン

音楽を、テクニック至上主義だと思っている人がいる。
どれだけ正確に弾けるか。
どれだけ、早く弾けるか。
どれだけ、メトロノームに合わせてぴったり弾けるか。
どれだけ、他のメンバーの音を聞いて演奏しているか。
どれだけ、綺麗な音を出せるか。

すごくわかります。
僕もそんなことを考えていた時期もありましたし、音楽やっているときは、毎日練習は欠かさずにやり続けました。
だけど、ぼくはあんまり上手くなれないタイプの人でしたので諦める日が来ます。まぁその話は今はいいや。ぼくの音楽じゃなくて、音楽の話。

確かに、その考え方は間違ってないと思います。。完璧なテクニックを持って、他のミュージシャンとメトロノームが鳴っているかのようにピッタリ合わせた時のグルーブ。または針の穴を通すような正確さで絶妙にずらしあった時のグルーブ。
あの破壊力をライブで見せつけられた時にぼくは射精を超える気持ちよさを感じたことがあります。
あれもひとつの音楽の完成形だと思います。

だけど、音楽ってそれだけなのかな。
音楽ってテクニックというものさしで全て測れるものなのかな。
多分、実力至上主義みたいな人もそうは思ってない。
音楽ってのは音楽だからこそ持ちえる、論理を超えた部分が間違い無くある。絶対ある。


素晴らしいメロディーはどうだろう。
高度な音楽理論を使って作ったメロディーは、必ず人の心を惹きつける訳じゃない。
もちろん理論を知っているからこそ素晴らしいメロディーを作れる人々もいる。
だけど、理論は必要条件じゃない。無くたって素晴らしいメロディーを、音楽を作る人はいる。

毎日ムカムカして、ネットで鬱憤を晴らすような学生が人々の毎日を輝かせる最高のメロディーを作ることだってある。
煙草を吸って、お酒をガバガバ飲んでるような奴が、帰りに気分任せで歌った鼻歌が、どっかの誰かの自殺を留めるほどの美しいメロディーになりえるかもしれない。


音楽はきっと、逆転満塁ホームランで1000点入ってしまうような、今までの常識やルールになんか目もくれないで、あっさりと変えてしまうような、そんなバカみたいにふざけた競技なんじゃないかなって思ってる。
夢も、楽しさも持たない退屈なやつが、一発逆転満塁ホームランを打つような、そんな王道ジャンプ漫画ストーリーみたいな音楽を、ぼくは死ぬまでにたくさん聞きたい。