煙草

実は、中学1年生の頃に、僕は不良という職種を選んだことがある。
「こんな顔の奴が!」とか「冗談はやめろよ!笑」
と、スクリーンの向こう側から、聞こえてきそうな気がしないでもない。
多分、不良をやっていた時にもそんな声は多分、聞こえない所で聞こえていたのだろうなと思う。

そんなわけで、当然、不良としての装備道具、煙草にも手を出した。
多分、僕らは他の人達よりも特別になりたかったのだろうと思う。煙草ってそういう奴らの為にしか存在していないはずだ。
中毒なんかどこにもない。きっと。

煙草はマジメな根暗ボーイの僕には全くおいしくなく、本当にまずかった。
それに、吸う度に親の顔を思い出してしまい、なんとも苦い思いを噛み締めながら吸った。
肺に入れてみるとなんとも言えない心地悪さが身体を支配した。
「これを大人は平然として吸えるのか。すごいな」と僕は思った。


そして、数ヶ月もすると僕は大人になりきれず、形のない退職届を提出した。僕は不良には容姿ともども向いていなかった。

それからというもの、煙草というものには一度足りとも手を出していない。
中学を卒業する頃には、友だちと「煙草なんてお金の無駄だよねー。あんなの買うくらいならお菓子買ってるほうがよっぽどいいよ」なんて、口走っていた気がする。
その友達が高校生になると煙草を吸い始めたのはなんとも笑えるような話だったけれど。

ぼくは、あれ以来、煙草を吸いたいと思ったことはないが、28歳とかになって煙草を吸っているような状態になっていれば、どうぞ笑い話にしてほしいなと、22歳の僕は思っている。
もちろん、不良にはなるつもりも今のところ、ない。


そして、女の子に関して言うと、元気な赤ちゃんを産んで、3人でずっと笑いあっていたいので、煙草を吸ってほしくないな。とこっそり思っている。