荒野の魔女が死んだ

おばあちゃんとは、あまりきちんと接したことがない。
おばあちゃんは、普通に接しているんだろうけど、僕は接し方が分からなかった。

おばあちゃんは子どもを五人も生んだ。そして、その長男の長男が僕だ。

おばあちゃんは坂東英二みたいな顔をしている。そして太っている。
服装は荒地の魔女みたいだと、中学生の頃の友達に言われたことがある。
ぼくもそう思っていた。

ばあちゃんは帝王切開をしていてお腹に大きな手術跡があり、
小さい頃はそこから怪獣が出てくるんだぞ、と脅かされたりして、信じていたこともあった。
ばあちゃんが作ってくれたおにぎりはコブシ一個半くらいのでかいおにぎりで、
それはとてもおいしかったけれどいつもお腹を壊させられた。


おばあちゃんとの思い出は本当に少ない。
きちんと心の底から話したことも無かったし、きちんと怒られたことも特に記憶がない。
おばあちゃんが死んだと言われても、実感がない。


一年前に2つほど
ぼくはおばあちゃんと、約束をした。
簡単過ぎる約束だったけれど、その2つとも叶えることが出来なかった。
正直、後悔している。多くの人があれほど後悔してきた失敗を僕もしてしまった。
おばあちゃんに思いを伝えても、もう返ってはこない。
きっとこの後悔の念は時々強くなったり消えかけたり、そしていつかは消えてしまうのかもしれない。
だから、生きている大切な人に連絡をとった。

おばあちゃんが最後に教えてくれたことは
僕を少し大人に、そして生きているうちにきちんと人と向き合うこと、
そんなふうに、ぼくは受け取った。